
現在、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コースに学びながらカールスルーエ音楽大学(ドイツ)に留学中のピアニスト亀井聖矢さんは、愛知県立明和高等学校音楽科を経て、 飛び入学特待生として桐朋学園大学に入学。2023年3月、首席で卒業しました。2019年、大学1年生のときに第 88 回日本音楽コンクールピアノ部門第1位、第43回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリを受賞し話題に。「コンクールに、コンサートに、駆け抜けた」という桐朋学園大学での4年間を振り返っていただきました。
コロナ禍もピアノに集中
—桐朋学園大学での4 年間、特に印象に残っていることは?
ピアノに打ち込むことができたことです。コンサートにコンクールにと駆け抜けた4 年間でした。
2022 年度に大学を卒業した私たちの世代は、コロナの影響でレッスンや講義のほとんどがオンラインに切り替わったほか、行事の多くが中止になるなど、大学生らしいことがあまり経験できませんでした。けれども、そのような状況下にも目標に向かって邁進することができたのは桐朋の環境のおかげです。そうした4 年間を過ごすことができたからこそ、今があるのだと思っています。
—桐朋学園大学に進学して良かった、と思うことは?
一番は現在も師事している先生方に巡り会うことができたことですね。桐朋では同時に2 人の先生に師事することができるため、大学生の頃からソリスト・ディプロマ・コースに在籍する現在に至るまで、岡本美智子先生、上野久子先生と、おふたりの先生に学んできました。また、今は留学先のカールスルーエ音楽大学で児玉桃先生にも師事しています。
複数人の先生に師事すると混乱するのでは?と言われることもあるのですが、私の場合は特にそういうこともなく、先生方がタッグを組んで育ててくださっているような、安心感のようなものを感じています。また、先生方それぞれから「新しい視点」を与えていただいたことで成長することができた、とも感じています。そして、その成長が本番での演奏にも反映されるようになり、そうした小さな積み重ねがモチベーションを上げることにも繋がりました。だからこそ、コンクールでも結果を残すことができたのではないかと感じています。
挑戦することで得られること
—2022 年11 月にロン=ティボー国際コンクールで優勝を果たされましたが、その前と後とで生活に変化はありましたか?
大学1 年生(2019 年)のときに第88 回日本音楽コンクールのピアノ部門で第1 位、第43 回ピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリ受賞を果たすことができ、その直後に状況が一変。それまでリサイタルの機会などほとんどなかったのが、さまざまな依頼をいただくようになりました。
対してロン=ティボーの優勝後は、ものすごく大きな変化というよりは、ひとつ上の階へ上ることができたような感覚でした。海外で演奏する機会が少しずつ増えたり、より多くの地域でリサイタルをさせていただけるようになったり、素晴らしいオーケストラと共演する機会も増えている実感があります。
—コンクールは演奏家としての基盤を作るために挑戦してきた?
「受けるのであれば結果を残してピアニストとして売れたい!」というよりは、「せっかく挑戦できる機会が目の前にあるんだから、やってみよう!」くらいの軽い気持ちで臨んでいます。
コンクールに挑戦している期間は集中力も、練習の密度もどんどん高まっていきますから、挑むことで成長することができます。挑戦すること自体に価値があるんです。勿論、結果が伴えば嬉しいですが、思うような成果を上げられなかったとしても自分にとってプラスになることは間違いありません。
“ 好き” という気持ちを忘れずに
—現在桐朋学園大学に学ぶ後輩たちにメッセージを!
これまでのことを振り返ってみると、常にこの曲が弾きたい、という音楽への欲求があり、それを弾きこなすにはどうしたら良いか、という試行錯誤がありました。すごくシンプルなことなのですが、「その曲が好きだ」という気持ちが何よりも大事なのだと思います。
そうした気持ちを持ち合わせていれば良い演奏家になれるというわけではありませんし、それがゴールというわけでもありません。けれども、壁にぶち当たったときや、勉強が嫌になってしまったときにも、常に「音楽が好きだ」という気持ちを持ち続けていれば乗り越えることができます。そしてそれは時に音楽の可能性を引き出す原動力にもなる。そうした気持ちを大切に、持ち続けてほしいです。
(取材/ 2024 年4 月 カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」にて)
亀井 聖矢さん
桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコース、カールスルーエ音楽大学に在籍中。愛知県立明和高等学校音楽科を経て、飛び入学特待生として桐朋学園大学に入学、2023年3月に首席で卒業。